誰かが何か叫んでいる。「やめろ」と言ってるような気もするけれど、よく聞き取れない。
何人かが腕や肩を掴んで後ろに引っ張って、それを力を使って吹き飛ばす。怪我はしていないと思う。
一歩踏み出すごとに耳鳴りが酷くなって、ぐわんぐわんと脳を殴りつけられているような、感覚。
もう少し前に進もうとして、膝が崩れた。仰向けに倒れるところを誰かに受け止められる。
「…!!…、……っ…、!」
何か言っている?目の前の顔の、口が動いている、それすらもう見えなくなってきた。
目の前は真っ白で、感覚が鈍った身体か微かに揺すぶられていることを教えてくる。
皮膚が針で突かれているように痛くて熱くて、心臓が激しく脈打って、頭は割れそうで、
ふっと意識が遠くなってまた戻ってくる。
けれど指先の方からだんだんふわふわした感覚が浸透してきて、きっと私は笑ってる。
「…見て…みたか、ったん、だ…」
――それって、きれい?
「ノーベンバーが…、好きだって、言った…」
――私は好きだよ。とても綺麗だと思う。
「そらの、いろ」
青空心中
僅かな陽光さえ駄目だった。
曇りの日でもずっと真っ暗な部屋の中で、外はどんな風だろうといつも思っていた。
だからノーベンバーが綺麗と言った、青空を最後に一目見たかった。
部屋を飛び出して駆け出して、幾人もの手を振り払って、初めて素で感じる真昼の外はとても広くて大きかった。
「きれいだ、ね、…ノーベンバー…」
08/2/23