07/07/02 哀しさも淋しさも






























――哀しさも淋しさも――


「…晋助」

寝ていると思っていたが呟いた声は、ひどく弱々しく部屋に響いた。
振り返ると、布団の中から二つの瞳がこちらを見ている。
煙管を置いて枕元まで寄ってやると、白い手が伸びてきて導かれるままに唇を重ねた。
閉じられていないの目を覗き込むようにし、髪を梳いてやるとすぅ、と細める。
十数秒の後、ゆるやかに唇を離した。代わりでもと言うように頬をすり寄せてくる。
珍しいな、そう思って浅く抱いてやるともう一度「晋助、」と声がした。

「なんだ」
「……優しいね」

目を見ないまま落とされた一言。
続きを促すように背を撫でると、は、と一度息を吸って口を開く。
きゅう、と僅かに抱きつく腕の力が増した。

「…ごめん…、今だけ」
「…あァ」

が独りを恐れるのは知っている。
それでも、と、続けようとした言葉は言い訳にしかならないことに気づいてしまった。


哀しさも淋しさも、愛情の代価でしょうか。


07/07/02