10/03/31 あたたかな指先






























――あたたかな指先――


はひどく丁寧に包装を剥がす。
今も目の前で真剣に、チョコレートの銀紙の端を探している。
が兄から貰ったという一口サイズの丸いチョコは、
一つひとつがカラフルに飾られていた。
プレゼントなんかの包装紙も、レジ袋に貼られたテープも、チュッパチャップスの包み紙も、
中古本の値札シールも、いつも白い指先で綺麗に剥がしていく。
突破口が見つかったのか、表面をなぞっていた指が止まった。
かり、と爪で軽くひっかく。少しめくれた端を摘んで、慎重に引っ張る。
中の茶色が少し見えたら逆側も同じように広げて、両端からぺりぺりと剥がし切った。
銀紙は破れたところもなく、大部分が卵形に丸まったまま中身と分けられた。

(…ちっせー手)

チョコレートを口に、皺を伸ばした包み紙を机に。
残りのチョコに伸ばそうかどうしようか迷った動きをしている手をなんとなく掴んだ。
細い指。手入れされた爪。白い甲。滑らかな肌。
片手で軽く覆えてしまう小さな手を引き寄せて、指先に軽く口づけた。
黙って見上げていたが、ずり、とソファの上を滑って身体を寄せる。
ちろりと撫でるように舐めるとさすがに表情を変えた。
開いた口に舌を滑り込ませてキスをする。
互いの舌の間で、とろりとカカオが溶けていった。
きゅ、と指を絡めるようにしてが手を握る。
それを控え目に握り返しながら、しばらく彼女に酔いしれた。



いつも俺に触れる、優しい指


10/03/31