08/05/27 もしも、という仮定ほど虚しいものはない。






























――もしも、という仮定ほど虚しいものはない。――


「貴女のことを好きになっていたら良かったのに」

ぽつりと古泉くんが零した。
涼宮さんとキョンくんを見ながら、寂しげな微笑を浮かべて。

「それがなんの救いにもならない言葉だって知ってる?」

実際、古泉くんが好きなのは私じゃない。
世界はそこまで甘くない、優しくない。生きていくのが嫌になるほどに。

「…そうですね。すみません」

彼はよく謝る。他人との会話で、一番波風を立てずにすむ方法。
自分を偽るというのはどんな心境なのだろう。

「謝ることじゃ、ないけどね」

どうしようもないのだから。キョンくんと何か口論をしている、涼宮さん以外には。
まあ――彼女がこの事実を知ったところで、
どうしようもないことには変わりないのだけれど。

「古泉くんが悪いんじゃないよ」
「…確かに、罪はないかもしれません。けれど、責任はあるでしょう?」

彼の視線が私に向く。優しげな哀しげな眼差し。
押し殺された彼の、一部分しか私は知らない。

「…その責任を問うのは誰?」

なんとも思ってない、ということを伝えたかったのだけど、
言った後で嫌味にも取れたなと古泉くんの微苦笑を見て思った。



一体誰が救われる、のか。


08/05/27